熊野那智大社文書
紀伊国熊野にある熊野三山の一つ、熊野那智権現(和歌山県那智勝浦町)に伝わる古文書である熊野那智大社文書には、中世から近世にかけて、盛んに行われた熊野詣(もうで)にかかわる貴重な資料が残されている。
地方の武士団などが「檀那(だんな)」で、宿泊をはじめとして、参詣を世話する宿坊が「御師(おんし)」となる「師檀関係」が結ばれ、宿坊側にとっては、お得意様である「檀那」との関係を経済的権利化し、宿坊同士で売り買いする「檀那売買の制度」も広く見られるようになる。
熊野那智大社文書には信仰以外に、経済的な関係でもある檀那に関する記述が数多くあり、熊野詣の顧客としての意味を持つ各地の武士団の系図が記録されていた。上野国の高山・小林の一族の系図も、「畠山氏系図」の中に登場する。このほか、売買された「檀那」の権利を書き記した文書にも小林一族の姿が散見される。